NewSQLとは?データベースとしての基本や特徴を初心者向けに解説

NewSQLデータベースは、大規模データ管理における従来のリレーショナルデータベースの長所と、NoSQLのスケーラビリティと柔軟性を融合した新たなデータベース技術です。既存のリレーショナルデータベースの能力を拡大しながら、並行して大量のデータを扱うための新たなニーズに対応します。

NoSQLがもたらしたスケーラビリティとパフォーマンスに加え、リレーショナルデータベースが持つ信頼性と一貫性の維持を併せ持つこの新しいデータベース技術について、詳しく理解していきましょう。

本記事では、NewSQLデータベースの基本的な概念と特性を包括的に分かりやすく解説します。

目次

NewSQLデータベースとは?

NewSQLデータベースは、大規模なデータの取り扱いにおいてリレーショナルデータベースの安定性と整合性を保ちつつ、NoSQLデータベースのような高いスケーラビリティと柔軟性を持つ新たな形のデータベースです。

NewSQLは”新しいSQL”という意味で、これまでのデータベースの限界を超えて、新しい可能性を提供する新しい形のデータベース技術です。

NewSQLの定義

NewSQLは、「新しいSQL」を意味し、リレーショナルデータベースのトランザクション整合性とSQLインターフェイスを保ちつつ、NoSQLのような高いスケーラビリティと分散処理能力を持つデータベースのことを指します。

NewSQLは大量のデータを効率的に処理する能力を持ちながら、リレーショナルデータベースのような一貫性と耐久性を維持するという特性を持っています。これにより、大規模なオンライントランザクション処理(OLTP)を必要とする現代のビジネス環境に適しています。

NewSQLが生まれた背景

NewSQLは、リレーショナルデータベースの一貫性と耐久性、そしてNoSQLデータベースのスケーラビリティと分散処理能力を必要とする、現代のデータ駆動型ビジネス環境から生まれました。

リレーショナルデータベースは一貫性と安定性が強みですが、大量のデータを高速に処理する能力には限界がありました。一方で、NoSQLデータベースはスケーラビリティと柔軟性が強みですが、トランザクション整合性を維持することが難しいという課題がありました。

この両者の長所を結合し、両者の課題を解消したのがNewSQLです。これにより、大規模なデータを効率的に処理しながらも、一貫性と耐久性を維持することが可能になりました。

リレーショナルデータベース・NoSQLとNewSQLの違い

NewSQL、リレーショナルデータベース、そしてNoSQLの各データベースは、それぞれが独自の特性とメリットを持っています。それらを理解し、各データベースが特定の状況やプロジェクトにどのように適合するかを把握することが重要です。

リレーショナルデータベースとNewSQLの違い

リレーショナルデータベースはデータをテーブル形式で保管し、その中で行と列によって構成されています。しかし、固定されたスキーマを必要とし、スキーマの変更は時間と労力を要します。また、スケーラビリティの問題も抱えています。大量のデータや高いパフォーマンスが求められる場合には、リソースの増加(スケールアップ)が必要となりますが、これには費用と時間がかかります。

一方、NewSQLはリレーショナルデータベースの持つ一貫性やトランザクションを維持しながら、NoSQLのような高いスケーラビリティを実現する新しい形のデータベースです。NewSQLは分散システムを利用することで、従来のリレーショナルデータベースでは難しかった水平スケーリング(スケールアウト)を可能にしています。

これにより、大規模なデータセットを効率的に管理しつつ、高いパフォーマンスを維持することが可能です。

NoSQLとNewSQLの違い

NoSQLはそのスキーマレス設計が特徴であり、さまざまな形式のデータを保存できる柔軟性を持っています。また、水平スケーラビリティを持つため、データ量が増えてもパフォーマンスを維持しつつデータベースを拡張することが可能です。しかし、一部のNoSQLデータベースは、データの一貫性やトランザクションの完全性を犠牲にしてこのスケーラビリティを実現しています。

それに対して、NewSQLはリレーショナルデータベースの一貫性とトランザクションを保持しながら、NoSQLのような水平スケーラビリティを実現します。これにより、NewSQLは大規模なトランザクション処理やリアルタイムのデータ分析を効率的に行うことが可能となります。

さらに、NewSQLは固定スキーマを利用しつつ、いくつかのシステムでは柔軟なデータモデリングやクエリングのオプションを提供しています。

選択のポイント

リレーショナルデータベース、NoSQL、そしてNewSQLはそれぞれ独自の特性とメリットを持っています。したがって、使用するデータベースを選ぶ際は、プロジェクトやビジネスの要件を考慮に入れることが重要です。

リレーショナルデータベースは一貫性と構造性を重視し、一方でNewSQLはリレーショナルデータベースの一貫性とトランザクションを保持しながらも、NoSQLのようなスケーラビリティを提供します。これは大量のデータを処理し、また高いトランザクション性能を必要とするシナリオに特に適しています。

一方、NoSQLはその柔軟性とスケーラビリティを活用し、大量のデータを効率的に処理することが可能です。また、スキーマの変更が頻繁に発生する、あるいはデータの形式が不定の場合にも有用です。

データベースを選択する際には、データの量や種類、スキーマの変更頻度、パフォーマンス要求、スケーリングの必要性など、プロジェクトの具体的なニーズを考慮に入れることが重要です。また、特定の状況では、これらのデータベースを組み合わせて使用するハイブリッドアプローチが最善の解決策となることもあります。


特性リレーショナル
データベース
NoSQLNewSQL
データモデル表形式
行と列で構成
多種多様
(ドキュメント、キー・バリューなど)
表形式
行と列で構成
スキーマ固定多くの場合スキーマレス固定、一部に柔軟性あり
スケーラビリティスケールアップ
(垂直スケーリング)
スケールアウト
(水平スケーリング)
スケールアウト
(水平スケーリング)
トランザクション処理高度なトランザクション処理一部に限定的なトランザクション機能高度なトランザクション処理
データ整合性強い整合性
(ACID準拠)
最終的な整合性
(BASE準拠)
強い整合性
(ACID準拠)
一貫性強い弱いまたは可調整強い
使用例高い一貫性やトランザクション性能が必要な場合大規模なデータ量や高いスケーラビリティが必要な場合RDBMSの一貫性とトランザクション性能
NoSQLのスケーラビリティが必要な場合

NewSQLの特性

NewSQLデータベースは、従来のRDBMSとNoSQLデータベースの強みを結集したデータベースです。一貫性とスケーラビリティ、そしてトランザクションの管理という重要な特性を備えており、これらは個々のビジネス要件や扱うデータの種類・量に対応するために重要な要素です。

この章では、NewSQLの主要な特性とそれぞれの機能について詳しく説明します。

一貫性とスケーラビリティ

NewSQLデータベースは、従来のRDBMSの強い一貫性(ACID準拠)と、NoSQLデータベースの高いスケーラビリティ(水平スケーリング)を両立しています。これは、データ分割(シャーディング)とレプリケーション技術を活用し、高い一貫性を保持しながらも、データベースのサイズやトラフィックに対応する能力を実現しています。

これにより、NewSQLは大量のデータを効率的に処理し、同時に多数のユーザーからのリクエストにも対応することができます。

分散システム

NewSQLデータベースの分散システム設計は、その高いスケーラビリティの根幹となっています。データは複数のノードに分散され、それぞれのノードは独立して動作することで、全体のシステムが柔軟かつ堅牢な性能を発揮します。故障があっても他のノードがその役割を担うことで、ダウンタイムなしにシステムの運用を続けることが可能です。

また、新たなノードを追加することで容易にシステムの容量を増やすことができ、ビジネスの成長に合わせてスケールすることが可能です。

トランザクション管理

NewSQLデータベースは、強力なトランザクション管理機能を持っています。これは、ACID(原子性、一貫性、分離性、持続性)プロパティを満たし、データの整合性を保つために重要です。

各トランザクションは原子的に行われ、一連の操作が全て成功するか、あるいは全て失敗するかのどちらかとなります。これにより、中途半端な状態でのデータの更新や削除を防ぐことができます。

また、NewSQLのトランザクション管理は、並行して行われる複数のトランザクション間でデータの整合性を保つためのロックや分離レベルなどのメカニズムを提供します。これらのメカニズムは、データ競合を防止し、正確かつ安全なデータの操作を可能にします。

さらに、分散システムにおけるトランザクション管理には特有の課題がありますが、NewSQLはそれらに対応するための高度なアルゴリズム(例えば、分散トランザクションの管理や、一貫性と可用性のトレードオフを解決するための技術)を採用しています。これにより、NewSQLは大規模な分散環境でも確実なトランザクションの管理を実現しています。

NewSQLのメリットとデメリット

NewSQLは、RDBMSとNoSQLデータベースのメリットを組み合わせています。しかし、そのメリットとともに考慮すべきデメリットも存在します。ここでは、NewSQLの主なメリットとデメリットについて詳しく説明します。

NewSQLの主要なメリット

NewSQLデータベースは特に大量のデータを扱うとともに、データの一貫性も求められる用途に適しています。具体的には下記の通りです。

1.スケーラビリティと一貫性の両立

NewSQLは分散システムの設計を採用しているため、データ量が増加してもシステム全体をスケールアウトすることで容易に対応できます。これにより、大規模なデータを扱うことが可能です。

さらに、リレーショナルデータベースのような強い一貫性も維持されています。

2.高いトランザクション性能

NewSQLは、高いトランザクション性能を実現します。一連の操作が全て成功するか、あるいは全て失敗するかのどちらかとなり、データの整合性を保つことができます。

3.既存のSQL知識の活用

NewSQLはSQLを使用するため、開発者が既存のSQL知識を活用できます。これにより、学習コストを抑えつつ、高性能なデータベースシステムを利用することが可能となります。

NewSQLの主要なデメリット

NewSQLには、一部の問題点やデメリットも存在します。ここではその主要なデメリットをいくつか紹介します。

1.成熟度の問題

NewSQLは比較的新しい技術であるため、リレーショナルデータベースやNoSQLデータベースと比べて成熟度が低い傾向があります。これは、一部の機能やツールがまだ発展途上である可能性にも繋がります。

2.コスト

NewSQLの製品は、その高度な機能を反映して、一般的には高価なものが多いです。また、適切なパフォーマンスを得るためにはより専門的な知識が必要な場合もあります。

3.ベンダーロックインのリスク

NewSQLソリューションの多くは商用製品であり、特定のベンダーに依存する傾向があります。これはベンダーロックインのリスクをもたらし、将来的に他のソリューションへの移行を困難にする可能性があります。


それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、NewSQLの導入を検討する際は、その特性が具体的な用途や要求に合っているかを詳細に検証することが重要です。

例えば、スケーラビリティと一貫性が必要で、既存のSQL知識を活用したい場合や、高いトランザクション性能が求められる場合などはNewSQLが適しています。

一方、初期投資を抑えたい場合や、柔軟なスキーマが必要な場合、あるいは特定のベンダーに依存したくない場合などは他のソリューションを検討することも重要です。

代表的なNewSQLデータベースの例

NewSQLデータベースは多種多様で、それぞれに特化した機能や特性を持っています。ここでは、その中から特に注目されている4つのNewSQLデータベースをピックアップし、それぞれの特性を紹介します。

  • Spanner
  • CockroachDB
  • TiDB
  • VoltDB

Spannerの特徴

Googleが開発したSpannerは、分散SQLデータベースとして広く知られています。Spannerの主な特性は、水平スケーラビリティと強い一貫性を兼ね備えた点にあります。Googleの強力なインフラストラクチャを活用して、分散トランザクションとレプリケーションを管理し、データの一貫性と可用性を保ちます。

また、SpannerはSQLクエリをサポートしており、リレーショナルデータベースと同様の使い方が可能です。これにより、従来のSQLを用いたアプリケーション開発をスムーズに行うことができます。大規模なデータセットを効率的に管理しながら、高い一貫性を必要とするシステムに適しています。

CockroachDBの特徴

CockroachDBは分散SQLデータベースで、Spannerと同様に、強い一貫性と水平スケーラビリティを提供します。このデータベースは、クラウドネイティブ環境を意識して設計されており、クラスタ間でのデータレプリケーションと自動修復機能を持ちます。

CockroachDBは、分散システム上でACIDトランザクションをサポートする一方、SQLインターフェースを提供しています。これにより、伝統的なSQLベースのアプリケーション開発を分散環境で行うことができます。高可用性と強い一貫性を求めるアプリケーションに特に適しています。

TiDBの特徴

TiDBは、分散リレーショナルデータベースとして設計されています。オンライントランザクション処理(OLTP)とオンライン分析処理(OLAP)の両方をサポートするハイブリッドトランザクショナル/分析処理(HTAP)データベースで、大規模データセットをリアルタイムで効率的に処理します。TiDBは、水平スケーリングと強い一貫性の両方を提供し、MySQLと互換性のあるSQLインターフェースを持っています。

TiDBはクラウドネイティブデータベースとして設計されており、Kubernetes上でのデプロイが容易です。また、自動シャーディングやフェイルオーバーといった機能を提供します。大規模なトランザクションと複雑なデータ分析を必要とするアプリケーションに最適です。

VoltDBの特徴

VoltDBはインメモリ型のNewSQLデータベースで、超高速なトランザクション処理能力を持っています。このデータベースは、一貫性を維持しつつ、高速なデータアクセスとリアルタイムのデータ処理を可能にします。

VoltDBは分散システム上でACIDトランザクションをサポートし、水平スケーラビリティを提供します。また、VoltDBはSQLをサポートしており、従来のSQLベースのアプリケーション開発にとって有用です。高いパフォーマンスと強い一貫性を必要とするリアルタイムのデータ処理に特に適しています。

NewSQLの選択基準と適用事例

この章では、多くのNewSQLデータベースから最適なものを選択するための基準と、それらが実際の環境でどのように活用されているかを紹介します。いくつかの具体的な例を通じて、NewSQLの選択と利用について理解を深めていきましょう。

NewSQLデータベースの選択基準

NewSQLデータベースの選択をする際には、以下の要素を評価することが重要です。

データの種類と量

データの種類(構造化、半構造化、非構造化)や量によって、適切なNewSQLデータベースが変わることがあります。たとえば、大量のデータを高速に読み書きする必要がある場合や、複雑なクエリを実行する必要がある場合は、高パフォーマンスなNewSQLデータベースを選択するとよいでしょう。

スケーラビリティ

データベースの成長を容易に管理できるかどうかは重要な判断基準です。大量のデータを扱う予定の場合、ホリゾンタルにスケールできるNewSQLデータベースが適しています。

一貫性と可用性

データの一貫性とデータベースの可用性も評価基準に含まれます。これは、運用中にどの程度データの一貫性を保つか、またデータベースが常に利用可能であることの重要性によります。

上述した選択基準は、すべてのNewSQLデータベースの特性を網羅しているわけではありません。各データベースは、データモデルだけでなく、一貫性、可用性、スケーラビリティなど、さまざまな特性において異なります。

ユースケース、要件、技術的制約などを考慮して具体的なデータベースを選択することが重要です。

NewSQLの実際の使用例

ここでは、具体的な業界や企業でNewSQLがどのように使用されているかについて紹介します。

  • 高速トランザクション処理:NewSQLデータベースはよく、高速なトランザクション処理が必要な金融業界で使用されます。たとえば、取引の記録や資産管理など、リアルタイムでの大量のデータ読み書きと、厳密な一貫性が求められる場面で活用されます。
  • ビッグデータ分析:NewSQLデータベースは、ビッグデータの分析にも活用されます。一般的に、従来のRDBMSでは処理速度やスケーラビリティの制約から、大量のデータの分析には向いていませんでした。しかし、NewSQLデータベースは高速なデータ読み書きと、水平スケーラビリティを実現していますので、大量のデータを扱うビッグデータ分析に適しています。
  • リアルタイムの在庫管理:Eコマースの企業では、リアルタイムで在庫を管理するために、NewSQLデータベースが使われることがあります。顧客がアイテムを購入するたびに在庫を即時に更新し、データの一貫性を保つことが重要です。NewSQLデータベースはこれらの要件を満たすことができます。

上記の例からわかるように、NewSQLデータベースはその特性に応じて、さまざまなシチュエーションで活用されています。それぞれのビジネスの要件に最適なNewSQLデータベースを選択することで、データの活用度を最大化することが可能です。

あとがき

今回の記事では、「NewSQLとは?」をテーマに、NewSQLの定義からその仕組み、RDBMSとNoSQLとの違いやその適用、そして実際の使用例について、初心者向けにわかりやすく解説しました。

世間では、表形式でデータを管理する「関係モデル」や、厳格なスキーマを必要としない「NoSQL」の認知度が高く、実際に広く利用されています。しかし、データの規模や扱う問題の性質により、データベースの選択は変わるため、トランザクションの一貫性とスケーラビリティを兼ね備えたNewSQLの需要も高まっています。

データを効率的に管理し、ビジネスに有効に活用したいと考えている企業や、データベース・データ分析の分野に興味を持ち学習に取り組んでいる方は、今回の記事を一つの知識として蓄え、有益に活用いただければと思います。

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