リレーショナルデータベースとは?基本と集合論を初心者向けに解説

データベース技術は、ビジネスから科学研究、日常生活まで、現代社会のあらゆる面で不可欠なものとなっています。その中で、最も広く使われているのが「リレーショナルデータベース」です。

一方で、その基本概念や仕組み、さらにはその起源や未来について理解している人は意外と少ないのかもしれません。この記事では、リレーショナルデータベースの基本や集合論などについて、初心者向けにわかりやすく解説します。

目次

はじめに:リレーショナルデータベースの呼称

この記事は、リレーショナルデータベースについて、初心者向けに基本や集合論など、リレーショナルデータベースを理解することを目的としています。

記事本文に入る前に、「リレーショナルデータベース」の呼称について説明しておきます。

世間では「リレーショナルデータベース」と呼ぶことが多いのですが、「関係データベース」と呼ばれることもあります。これはどちらも同じ意味を表しています。当記事では、呼称についてリレーショナルデータベースで統一して説明していますので、予めご理解ください。

リレーショナルデータベースとは

リレーショナルデータベースは、さまざまな情報を表形式で格納し、その間の関係性を構築するためのデータベースシステムです。では、その詳細について見てみましょう。

基本的な概念

リレーショナルデータベースでは、情報を「表(テーブル)」という形式で格納します。

これらの表は「行(レコード)」と「列(フィールド)」によって構成されます。列は特定の種類のデータ(たとえば、名前や電話番号など)を表現し、行はそのデータの個々の「レコード」を表します。下記に、学生情報を格納したリレーショナルデータベースの一例を紹介します。

| 学生ID | 名前    | 学部       |
|--------|---------|------------|
| 001    | 山田    | 工学部     |
| 002    | 田中    | 経済学部   |
| 003    | 佐藤    | 文学部     |

この表では、「学生ID・名前・学部」が列を表しており、各学生「001山田・002田中・003佐藤」が行を表しています。この列と行の考え方はExcelと同様で一般的な表の概念となります。

テーブル間のリレーション

リレーショナルデータベースの強力な特性は、表間の「関連性」を扱う能力です。

各テーブルは一意の「主キー(Primary Key)」によって識別され、この主キーを使用して他のテーブルと関連付けることができます。この主キーと他のテーブルに存在するキーとの関連付けを「外部キー(Foreign Key)」と呼びます。下記に、学生テーブルと学部テーブルとの関連性を示す一例を紹介します。

学生テーブル:

| 学生ID | 名前    | 学部ID |
|--------|---------|--------|
| 001    | 山田    | 01     |
| 002    | 田中    | 02     |
| 003    | 佐藤    | 03     |

学部テーブル:

| 学部ID | 学部名称 |
|--------|---------|
| 01     | 工学部  |
| 02     | 経済学部|
| 03     | 文学部  |

このように、学生テーブルの「学部ID」フィールド(これが外部キーです)は学部テーブルの「学部ID」フィールド(これが主キーです)と関連付けられています。これにより、たとえば学生の名前と関連する学部の名称を一緒に取得するなど、データ間の関連性を活用した柔軟なデータ加工が可能になります。

学生テーブルと学部テーブルを関連付け:

 名前    | 学部名称
------+-----------------
 山田  | 工学部
 佐藤  | 文学部

このような表間の関連性はリレーショナルデータベースの中心的な特徴であり、この概念によりデータの整合性と一貫性が保たれ、重複を避けることが可能になります。

リレーショナルデータベースの重要性

現代の多くのアプリケーションにおいて、データの管理は必須の要素です。そのデータ管理を効率的に行うためには、データを格納、取得、更新、削除するための信頼性の高いシステムが必要となります。そしてリレーショナルデータベースは、これらの要件を満たすための強力なツールです。

リレーショナルデータベースは、複雑なクエリ(要求)を可能にし、表間の関連性を利用した柔軟なデータ操作を実現します。また、トランザクションの完全性、データの一貫性、バックアップと復旧のメカニズムなど、データの信頼性と整合性を維持するための多くの機能を備えています。

これらの特性により、リレーショナルデータベースは、Webアプリケーションからモバイルアプリケーション、デスクトップアプリケーションに至るまで、幅広い用途で使用されています。

リレーショナルデータベースの歴史的背景と集合論

データベースがどのように発展してきたのか、そのルーツを知ることで、リレーショナルデータベースの理解を深めることができます。そのためには、集合論の概要と、初期のデータベースモデルであるネットワークモデルとの比較を理解することが重要です。

集合論とリレーショナルデータベース

リレーショナルデータベースの基本は数学の集合論です。その理由の一つは、データが「関係」あるいは「テーブル」という形で格納され、そのテーブル自体が一連のタプル(レコード)の集合とみなされるからです。

たとえば、学生とそれぞれが参加しているスポーツを記録する以下のようなテーブルを考えてみましょう。

| 学生ID | スポーツ名 |
|--------|-----------|
| 001    | バスケットボール |
| 002    | サッカー |
| 003    | バドミントン |
| 004    | テニス |

このテーブルは、学生とスポーツという2つの異なる属性(または項目)を持つ一連のタプル(レコード)の集合とみなすことができます。各タプルは一意の学生IDとそれに関連付けられたスポーツ名を表します。

このような表(あるいは集合)は、それぞれの学生がどのスポーツをしているのかという関係を表現しています。リレーショナルデータベースの中心的な考え方は、このような表(または「関係」)を使って情報を整理し、保管することです。

結合前のテーブル

学生テーブル:

| 学生ID | 学生名 | スポーツID |
|--------|-----------|--------|
| 001    | 山田 | 001    |
| 002    | 佐藤 | 002    |
| 003    | 鈴木 | 003    |
| 004    | 高橋 | 004    |

スポーツテーブル:

| スポーツID | スポーツ名 |
|--------|-----------|
| 001    | バスケットボール |
| 002    | サッカー |
| 003    | バドミントン |
| 004    | テニス |

学生テーブルのスポーツIDは「外部キー」(Foreign Key)であり、スポーツテーブルのスポーツIDを参照します。それによって、学生IDとスポーツ名が関連付けされます。

さらに、リレーショナルデータベースでは、これらの表(関係)を操作するための一連の操作(結合、選択、射影など)が提供されており、これらはすべて集合論の原則に基づいています。これにより、データの柔軟な操作と複雑な問い合わせが可能になります。

つまり、集合論の概念はリレーショナルデータベースの設計と操作の根幹を成しています。それぞれのテーブルが特定の関係を表現する一連のタプル(レコード)の集合であり、これらのテーブル間での関連性を活用して、データを抽出、整理、操作することができるのです。これにより、データの効率的な管理・活用を実現しています。

主キー(Primary Key)や外部キー(Foreign Key)、表の結合の概念については、Excelの「VLOOKUP」関数を使ったご経験のある方ならイメージしやすいでしょう。

ネットワークモデルとの比較

リレーショナルデータベースが登場する前の1960年代には、主にネットワークモデルが使用されていました。このモデルでは、各レコードが親子関係を持つ他のレコードとリンクしており、データの関連性が明示的に表現されていました。

しかし、その複雑さと柔軟性の欠如から、データの変更や検索が困難でした。リレーショナルモデルは、この問題を解決したモデルです。表形式のデータ構造と集合操作を使用することで、データの追加、削除、変更、検索が直感的かつ柔軟に行えるようになり、現在も広く使用されています。

ネットワークモデルの例
学部1 <--- 学生1 ---> スポーツ1
      |         |
学部2 <--- 学生2 ---> スポーツ2

上記の図では、<—と—>がリンクを表し、各エンティティ間の関係を示しています。学生1は学部1に所属しており、スポーツ1を行っています。同様に、学生2は学部2に所属し、スポーツ2を行っています。

このようなネットワークモデルでは、各エンティティ間の関係がリンクによって直接的に表されます。このため、ネットワークモデルではエンティティ間の複雑な関連性を扱うことができますが、一方でその複雑さゆえにデータの管理が難しくなる場合もあります。

これとは対照的に、リレーショナルモデルでは各エンティティ(テーブル)が互いに独立しており、それぞれのテーブルが他のテーブルと関連付けられるのは主キーと外部キーによる関連性だけです。これにより、リレーショナルモデルはデータ管理の簡易さと一貫性を実現しています。

リレーショナルデータベースの操作

リレーショナルデータベースを効果的に利用するためには、その操作方法について理解しておくことが重要です。この章では、リレーショナルデータベースを操作する際に基本的な概念である「トランザクション」、「ロック」、そして「SQL言語」について説明します。

トランザクション

データベースにおける「トランザクション」とは、一連の操作のまとまりを意味します。たとえば、銀行口座間での送金操作はトランザクションの一例といえます。

ここで重要なのは、トランザクションの「すべての操作が成功するか、あるいはすべての操作が失敗する(元に戻る)」という原則です。これにより、データの一貫性を保つことができます。リレーショナルデータベースではこの原則を厳格に適用して、データの信頼性を保証します。

トランザクションの概念は、データの一貫性を維持する最重要なテーマです。下記の記事で詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。

ロック

ロックはデータベースの重要な特性で、同時に多くのユーザーがデータベースにアクセスしているときにデータの整合性を保つために使われます。

特定のデータ項目を操作しているユーザー、またはトランザクションがロックを取得すると、その間他のユーザーやトランザクションはそのデータ項目を変更できなくなります。これにより、同時アクセスによるデータの競合や不整合を防ぐことができます。

SQL言語

リレーショナルデータベースを操作するための言語として最も広く使用されているのがSQL(Structured Query Language)です。

SQLはデータの検索、挿入、更新、削除など、データベースに対するさまざまな操作を行うための標準的なインターフェースを提供します。SQLの主な特徴はその直感的な文法と強力なデータ操作能力で、複雑なデータ関係を簡潔に表現することができます。

リレーショナルデータベースの現在と未来

リレーショナルデータベースはその誕生から半世紀以上経つ現在も、データの管理と操作のための主要なシステムとして幅広く活用されています。

しかし、その間に技術の進歩は止まることなく、リレーショナルデータベース自体も進化を続けています。この章では、リレーショナルデータベースの現在の使用状況、一般的な用途、そして将来予想について説明します。

処理速度の進歩と現在の使用状況

近年、リレーショナルデータベースはハードウェアの進歩により処理速度が大幅に向上しています。

具体的には、マルチコアプロセッサやSSDの普及、RAMの価格低下により、大量のデータを高速に処理することが可能になりました。これらの技術の進歩は、ビッグデータの処理、高速なリアルタイムアナリティクスなど、新しい領域でリレーショナルデータベースが活躍するための土壌になりました。

また、オープンソースのリレーショナルデータベースシステムは数多く存在し、これらが大規模な企業環境でも一般的に使用されています。これらのシステムは、コミュニティによるサポートと開発環境があり、多くの場合、商用のデータベースシステムと同等またはそれ以上の機能を提供しています。

リレーショナルモデルは当初、ネットワークモデルよりも処理速度が遅いという欠点がありました。現在では、最適化技術やハードウェアの進歩により処理効率も改善しています。

普通の用途ならリレーショナルモデル

リレーショナルデータベースは一般的なデータ管理のための主要な選択肢として広く受け入れられています。

ウェブアプリケーションやエンタープライズシステムでの利用はもちろんのこと、さまざまな業界で情報を効果的に管理するために活用されています。その堅牢性と信頼性は、広範で複雑なデータ関係を持つビジネスにおいて、リレーショナルデータベースが不可欠なツールである理由を明確にしています。

また、リレーショナルデータベースの一貫性、組織的なデータ整理、セキュリティの強化といった特性は、規模や業界を問わず多くのビジネスがデータ管理に求める重要な要素です。

さらに、リレーショナルデータベースは、フレームワークやライブラリとの親和性も高いため、ソフトウェア開発者にとっては仕事を容易にするツールとなっています。これらの特性から、リレーショナルデータベースは今後も広範囲な用途で使用され続けることでしょう。

リレーショナルデータベースの未来予想

リレーショナルデータベースの未来は、データ管理の新たなニーズと技術的進歩により形成されるでしょう。AIやマシンラーニングの普及、IoTデバイスからのデータ増加、クラウドベースのサービスの拡大など、これらの新しいトレンドはリレーショナルデータベースの進化を推進するはずです。

また、新しいデータモデルとデータベース技術の出現は、リレーショナルデータベースの伝統的な範囲を超えてデータを扱う能力を実現するでしょう。ただし、リレーショナルデータベースは今後も企業のデータ管理における中心的役割を果たし続け、技術進歩に合わせて進化していくと予想されます。

新しいデータベースの概要については、次章で説明します。

リレーショナル以外のデータベース

リレーショナルデータベースがデータ管理の基本である一方、さまざまなシナリオや要件に対応するために、その他のデータベースモデルも存在します。

ここでは、NoSQLデータベースとNewSQLデータベース、この2つの代表的なモデルについて紹介します。

NoSQLデータベース

NoSQL(Not Only SQL)データベースは、リレーショナルデータベースの制約を克服するために開発されました。NoSQLは、大量のデータを効率的に処理したり、柔軟なデータ構造をサポートしたりする能力を持っています。

リレーショナルデータベースの一貫性を保つ性質には「厳格な制約」が伴います。そのため、大量のデータを取り扱う際にはデメリットとなり得るのです。NoSQLは、その制約を和らげたモデルです。

キーバリューストア、ドキュメントデータベース、ワイドカラムストア、グラフデータベースなど、さまざまなタイプのNoSQLデータベースがあります。これらのデータベースは、ビッグデータやリアルタイムアナリティクスなど、リレーショナルデータベースでは満たしにくい特定のニーズに対応します。

NoSQLデータベースの詳細については、下記の記事で詳しく解説しています。

NewSQLデータベース

NewSQLは、リレーショナルデータベースの一貫性と堅牢さを保ちつつ、NoSQLが提供するスケーラビリティとパフォーマンスの向上を目指す新しい種類のデータベースです。これらは、分散システムの利点を活用しながら、トランザクショナルな整合性を維持する能力を持っています。

その結果、NewSQLは、大規模で複雑なトランザクションを扱う必要があるシナリオで、リレーショナルデータベースの特性を保ちつつ、高度なパフォーマンスを実現します。

NewSQLデータベースの詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。

あとがき

この記事では、「リレーショナルデータベースの理解を深める」をテーマに、リレーショナルデータベースの基本概念からその利点、歴史、操作方法、そして現在と未来について、初心者向けに詳しく解説しました。

リレーショナルデータベースは、ショッピングサイトからSNS、ヘルスケア、教育、金融など、あらゆる業界でデータの整理と管理の基盤として活用されています。しかし、これらのサービスがスムーズに機能する裏には、適切なデータベースが選択され、その機能が最大限に活用されているのです。

この記事を通じて、リレーショナルデータベースの概要と重要性を理解していただければ幸いです。データベースの世界は広く深いですが、当サイトではこれからもさまざまな視点から情報発信していきますので、またご覧ください。

なお、当記事の続編にあたる「リレーショナルデータベースの構造」に関する記事も公開中です。

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