3値論理とNULL│データベースにおける重要性を理解しよう

データベースの概要を理解する上で、「3値論理」と「NULL」の理解は必須となります。しかし、これらの概念は初心者にとって難解に感じられるかもしれません。

「3値論理」とは何か?「NULL」とは何を意味し、どのように扱うべきなのか?

これらの質問に対する答えが、データベースの理解を深めるカギとなります。

この記事では、「3値論理」と「NULL」の基本的な定義から、それぞれの意義、データベースでの扱い方、そして具体的な使用例まで、初心者にも理解しやすい形で詳しく解説します。この知識を身につけることで、データベースの知識の幅が広がることでしょう。

目次

3値論理とは何か

3値論理は、その名の通り、[真(True)、偽(False)、そして未定義または不明(通常はNULLと表現される)]の3つの値を持つ論理体系です。

  • 真(True)
  • 偽(False)
  • 未定義、不明(NULL)

通常、わたし達は2値論理(真と偽のみを扱う)を考えがちですが、データベースなどの環境では、「未定義」または「不明」を表現するために3値論理が使われます。

NULLの表現はさまざまです。[未定義 または 不明]や[不明・未知 または 非存在・適用不能]などの表現があります。

2値論理と3値論理の違い

2値論理と3値論理の主な違いは、「値の範囲」にあります。

2値論理では、値は「真」または「偽」のみとなります。それに対して3値論理では、「真」、「偽」、そして「不明 または 非存在」(NULL)の3つの値を扱います。

以下のテーブルは、それぞれの論理体系での値の範囲を紹介しています。

2値論理3値論理
真(True)真(True)
偽(False)偽(False)
NULL

2値論理は、ExcelのIF関数をイメージすると分かりやすいです。つまり、TrueかFalseの2択です。

3値論理が必要な理由とその意義

では、なぜ3値論理が必要なのでしょうか?

それは、現実の情報を正確にモデリングするためです。たとえば、あるアンケートで回答者が質問に回答しなかった場合、その回答を「真」または「偽」で表現することはできません。

これは「未定義」または「不明」の状態に該当します。このような状況を正確に表現するために3値論理が使用されます。

下記のテーブルは、アンケートの例を用いて、3値論理の利用場面を紹介しています。

回答者Q:チョコレートは好きですか?
山田真(True)
田中偽(False)
佐藤Null

このテーブルでは、山田さんはチョコレートが好き(真)、田中さんはチョコレートが好きではない(偽)。そして佐藤さんは回答していない(NULL)ことが分かります。

3値論理は、この佐藤さんのような回答が存在しない、または未確定の状況を正確に表現するために存在します。

また、3値論理はデータベースのNULLと密接に関連しています。NULLはデータが存在しない、または未確定であることを表す特別な値です。この特殊な値を適切に扱うためには、3値論理の実践的な理解が必要です。

たとえば、上記のテーブルの佐藤さんの回答をSQLで検索すると、佐藤さんの回答は「真」でも「偽」でもありません。これは、NULLが特殊な値であるため、通常の2値論理の演算では適切に扱うことができないからです。

つまり、3値論理の理解は、データベースでNULLを適切に扱うため、そして現実世界の情報をより正確に表現するために必要です。これは、特にデータ分析やデータベース設計など、情報を扱う作業において重要です。

NULLの理解と活用

データベースにおけるNULLは、特殊な状況を表現するためにとても重要な概念です。しかし、NULLの理解と活用には注意が必要です。これは、NULLが通常の値とは異なる性質を持つためです。

NULLの定義とその利用方法

NULLはデータが存在しない、または未確定であることを意味する特殊な値です。

他の値とは異なり、NULLは何らかの具体的なデータを表現するものではありません。そのため、NULLと他の値とを直接比較することはできません。この特性がNULLの利用を複雑にしており、深く理解することが重要です。

NULLを使用する具体的な状況と例

では、具体的にどのような状況でNULLを使用するのでしょうか。一般的には、以下のような状況でNULLが使用されます。

  1. データが不明または不確定である場合
  2. データが存在しない場合


それぞれの状況に対する具体的な例を以下のテーブルで見てみましょう。

①データが不明または不確定である場合

学生ID名前学部
001山田工学部
002田中経済学部
003佐藤NULL

佐藤さんの学部が不明であるため、’学部’の列にNULLが使用されています。これは、「データが不明または不確定である場合」に該当します。


②データが存在しない場合

学生ID名前学部研究室
001山田工学部工学研究室
002田中経済学部経済研究室
003佐藤文学部NULL

ここでは、文学部の佐藤さんは研究室に所属していないと考えられます。このような状況では、「データが存在しない場合」としてNULLを使用することが適切です。


以上のように、NULLはデータが存在しない、または未確定といった状況を表現するために、データベース内で重要な役割を果たします。

具体的な例を通じて、NULLの理解とその適切な活用方法について学んできました。次の章では、NULLを含むデータの取り扱いや演算で注意すべき点について解説します。

NULLの取り扱いと注意点

データベースを扱う上で、NULLの理解と適切な取り扱いは重要です。しかし、NULLは他の値とは異なる特性を持つため、注意が必要です。

この章では、NULLを含むデータの取り扱いと、NULLを含む演算でのトラブルとその対策について解説します。

NULLを含むデータの取り扱い

データベースにおいて、NULLを含むデータの取り扱いは簡単ではありません。なぜなら、NULLは他の値とは異なる性質を持つため、通常の方法でデータを取り扱うことができないからです。

一般的に、NULLは何も表現していない、あるいは不明な値と考えられます。

したがって、NULLと他の値とを直接比較することはできません。例えば、’NULL = 1’や’NULL = 0’といった比較は、結果を明確にすることはできません。そのため、通常の比較演算子ではなく、特別な演算子(IS NULLやIS NOT NULL)を用いる必要があります。

NULLを含む演算でのトラブルとその対策

NULLを含むデータを操作する際には、NULLがどのように扱われるかに注意が必要です。NULLが結果に与える影響は、演算の種類によって変わるからです。

たとえば、NULLを含む算術演算では、結果は常にNULLになります。これは、NULLが具体的な数値を持たないため、NULLと数値を組み合わせた算術演算の結果は不確定、つまりNULLになるからです。

また、NULLを含む論理演算では、結果は通常の2値論理(真か偽)ではなく、3値論理(真、偽、NULL)が採用されます。これにより、NULLの存在を考慮に入れたより精緻な条件判断が可能になります。

具体的な演算結果は下記のテーブルを参考にしてください。

演算結果
NULL AND 真NULL
NULL AND 偽
NULL OR 真
NULL OR 偽NULL

上記のように、NULLを含む演算では一見予想外の結果になることがあります。そのため、データの状態をしっかりと理解し、適切な演算を行うことが重要です。

NULLの内部的な扱いとIS NULLの理解

データベースはNULLをどのように内部的に管理しているか、そしてそれがなぜ”列名 IS NULL”という記述が必要になるのかについて、この章で説明します。

データベース内部でのNULLの管理

データベースはNULLを特殊なマーカーとして管理します。つまり、NULLを持つ列はその列が存在しない、またはそのデータがまだ未確定であることを意味する特別なマーカーです。それにより、データベースはNULLと非NULLの値を区別することができます。

この管理方法により、NULLと非NULLの値が混在する可能性のあるクエリ結果を適切に処理することが可能となります。たとえば、次のようなデータを考えてみましょう。

学生ID名前学部研究室
001山田工学部工学研究室
002田中経済学部経済研究室
003佐藤文学部NULL

上記のテーブルでは、佐藤さんの研究室はNULLとなっています。このような状況でも、データベースはNULLの管理方法により、他の学生の研究室情報と佐藤さんの研究室情報(NULL)を適切に区別することができます。

NULLと非NULLを区別するという表現は、[工学研究室・経済研究室]と[NULL]を同列に扱わない、つまり[NULL]は研究室の種類ではなく、NULLであることをデータベースが区別するという意味です。

“列名 IS NULL”という表現の必要性とその理由_SQL

さて、なぜデータベースでNULLを扱う際に“列名 IS NULL”という表現が必要なのでしょうか。これは、NULLが特殊な意味を持つため、通常の値と同じようには比較できないからです。

例えば、次のようなSQLクエリを考えてみましょう。

SELECT * FROM 学生 WHERE 研究室 = NULL;

上記のクエリでは、研究室がNULLである学生を取得しようとしています。

しかし、これは期待通りに動作しません。なぜなら、NULLは特殊な値であり、他の値と直接比較できないからです。このため、上記のクエリは一見すると期待通りの結果を返すように見えますが、実際には1つも結果を返しません。

そこで、正しくNULLを扱うためには“列名 IS NULL”という表現を用いる必要があります。この表現を使用すると、データベースは列がNULLである行を正しく識別することができます。たとえば、上記のクエリは次のように書き換えることができます。

SELECT * FROM 学生 WHERE 研究室 IS NULL;

このクエリを実行すると、研究室がNULLであるすべての学生(この場合、’佐藤’)を正しく取得することができます。

以上が、データベースでNULLを適切に扱うための基本的な考え方となります。NULLは一見すると扱いが難しそうな概念ですが、その特性と適切な扱い方を理解することで、より高度なデータ操作が可能となります。

あとがき

この記事では、「3値論理とNULLの理解を深める」をテーマに、3値論理の概念、NULLの重要性とその取り扱い、そしてこれらがデータベース内部でどのように扱われるのかを解説しました。

3値論理とNULLは、情報が欠落したり不確定であったりする現実の世界をより正確に表現するための重要な概念です。データベースを用いて複雑なビジネスロジックを実装するためには、これらの概念の理解と適切な利用が不可欠です。

この記事を通じて、3値論理とNULLの概念とその重要性を理解していただければ幸いです。データベースの世界は広く深いですが、当サイトではこれからもさまざまな視点から情報発信していきますので、またご覧ください。

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