当サイトは「データベース」に関して、初学者向けに分かりやすい情報を発信しています。一方で、データベースをビジネスで活用するためには、何らかのシステムと連携する必要があります。
つまり、データベースを実践的に学習する際には、他のIT分野のリテラシーも高める必要があり、幅広い知識を身につけることが重要なのです。これには、今回のテーマであるシステム開発も含まれます。
そして、データベースを深く理解することは、より高度なデータ分析、データサイエンスの分野に進む前提条件でもあります。
本記事では、データベースの視点から「システム開発アプローチ」について、具体的に説明します。
データベースは、システムと連携することで初めてその真価を発揮します。この章では、システム開発とデータベースの関連性について説明します。
一般的に、データベースは単独で使うものではありません。
目的に応じたシステムに対してデータベースを設計し、それをシステムと連携することで人間が利用する一体的なシステムが完成します。そして、システムを開発する際には、データの整合性や一貫性も重視しなければなりません。
そのため、システム開発とデータベース設計は、お互いに共同して進めていくことが多いです。この記事で説明するデータベース視点のシステム開発アプローチは、その基本となる知識です。
多くの場合、各会社の独自の業務ニーズに対応するために、専用のシステム開発が求められることが多いです。
ただし、必要な機能が市販のシステムで満たされる場合や、業務の標準化が望まれる場合は、カスタマイズされたシステムよりも市販のシステムの方が最適な選択となることもあります。たとえば、経理や給与計算、従業員管理など汎用性の高い業務などです。
一方で、専門性の高い業務や特有の業務については、自社に最適化されたシステム開発が必要になります。そして、システムは基本的にデータベースを含むため、その設計・開発にはデータベースの視点が不可欠です。
システム開発とデータベースはIT分野が異なる印象が強いかもしれませんが、実は両者の親密度はとても高いのです。
システム開発には多くの方法論が存在しますが、大きな枠組みとして「システム開発アプローチ」があります。これは、システムを開発するための基本的な考え方やフレームワークを意味します。
システム開発アプローチには3つの主要な種類があります。
システム開発における3つの主要なアプローチとは、「プロセス中心アプローチ」「データ中心アプローチ」「オブジェクト指向アプローチ」です。それぞれ、どのような視点を中心にシステムを設計・開発するかで区別されます。
次の節で、それぞれのアプローチについて詳しく説明します。
プロセス中心アプローチは、ソフトウェアの機能(プロセス)を中心にシステム開発を行う方法論です。
具体的には、システムがどのような機能を果たし、どのように動作するかに焦点を当て、それに基づいてシステムを設計・開発する手法です。このアプローチの利点は、明確なプロセスフローに基づいてシステムを設計することで、システム全体の流れを理解しやすくする点にあります。
一方で、データの構造や管理方法については考慮が不足する可能性もあります。
データ中心アプローチは、業務で取り扱うデータを中心にシステム開発を行う方法論です。
このアプローチでは、まずデータの種類、データ間の関係性、データの流れなどを深く理解し、それに基づいてシステムを設計・開発します。データが事業活動の核心であり、その管理と活用がビジネスの成功を左右する現代において、データ中心アプローチは非常に重要です。
また、データベースの視点から見れば、最も密接な関連性を持つアプローチでもあります。
オブジェクト指向アプローチは、プログラムやデータを「オブジェクト」としてとらえてシステム開発を行う方法論です。
オブジェクトとは、データとそのデータに対する操作をひとまとめにしたものを意味します。このアプローチは、現実世界の事象を直感的にモデル化しやすいというメリットがあります。
また、オブジェクト指向設計は再利用性や拡張性が高いという特性を持ち、大規模なシステム開発においては特にその力を発揮します。
それぞれのアプローチには一長一短があり、システム開発を進める際には、開発対象のシステムの特性や目的、そして開発チームのスキルセットなどを考慮することが重要です。これらのアプローチを理解することは、システム開発の基本的な考え方を学び、より効率的にシステムを開発するための第一歩となります。
それぞれのシステム開発アプローチには独特の目的と強みがあります。システム開発に関わるのであれば、それぞれのアプローチを理解しておくことが重要です。
下記でそれぞれのアプローチの目的と強み、適切な使用シナリオについて説明します。
前章で説明したシステム開発アプローチの各アプローチについて、一覧表で比較します。
アプローチ | 目的 | 強み |
---|---|---|
プロセス中心アプローチ | システムの動作を明確に定義する | ・システム全体のフローを理解しやすい ・高い統制性と予測可能性 |
データ中心アプローチ | データの流れと管理を最適化する | ・データの一貫性と完全性の確保 ・データを中心としたビジネス視点 |
オブジェクト指向アプローチ | 現実世界の問題を直感的にモデル化する | ・高い再利用性と拡張性 ・現実世界の問題を直感的にモデル化 |
それぞれのアプローチがどのようなシナリオに最も適しているのかを考えてみましょう。
プロセス中心アプローチは、操作の手順が明確で、システムの出力が一連の明確な手順に従って決定されるようなシステムの開発に適しています。たとえば、製造業の製造ライン制御システムや、金融業界の取引処理システムなどが該当します。
データ中心アプローチは、データの管理や整理が重要なシステムに適しています。特に、データの一貫性と完全性が必要とされる場合に有用です。たとえば、銀行の顧客情報管理システムや、大規模なEコマースサイトの商品情報管理システムなどが該当します。
オブジェクト指向アプローチは、現実世界の事象を模倣するシステムの開発に適しています。具体的には、再利用性と拡張性が求められ、新たな要素や機能を追加することが頻繁に必要なシステムに有用です。たとえば、ゲームの開発や、シミュレーションソフトウェアの開発などが該当します。
実際には、これらのアプローチは組み合わせて使用される場合も多いです。プロジェクトなどで各アプローチを実行するには、そのプロジェクトの具体的な要件と目標を詳細に定めたうえで細分化し、それぞれのアプローチの特性を理解することが重要です。
システム開発に携わるためには、専門的な知識と技術的なスキル(リテラシー)が求められます。
具体的には、データベースやシステムアーキテクチャの理解が必要となります。それぞれ、どのような理由でどのような分野のリテラシーが求められるのか、下記で説明します。
データベースは、システム開発の根底をなす要素であり、その理論的な知識と実用的な知識が必要とされます。具体的には下記のような知識やスキルが求められます。
データモデリングは、実世界の情報をデータベースに適した形式に変換するプロセスです。このスキルは、データ中心アプローチを採用する場合に特に重要です。
SQL(Structured Query Language)はデータベースと対話するための言語であり、データを検索、挿入、更新、削除するために使用されます。データベースを取り扱ううえで、必須となる知識です。
データベース設計は、データの格納方法、構造、関連性を定義する役割であり、パフォーマンス、安全性、信頼性に直接影響します。高い専門性と幅広い知識が必要です。
複数のユーザーが同時にデータベースにアクセスする際のデータの整合性を保つために、トランザクション管理の理解が必要です。また、パフォーマンスチューニングは、データベースのパフォーマンスを最適化するための重要なスキルです。
これらは現在のデータベースの主流であるリレーショナルデータベースの根幹となる知識です。
システムアーキテクチャは、システムの構造とその構成要素、そしてそれらが相互にどのように関連しているかを表現するものです。
プロセス中心やオブジェクト指向のアプローチを遂行する場合、DFD(Data Flow Diagram)やUML(Unified Modeling Language)など、システムアーキテクチャを表現するためのツールや言語の理解が必要となります。
プロセス中心アプローチでは、DFD(Data Flow Diagram)が頻繁に用いられます。DFDは、システム内でのデータの流れを視覚的に表現するツールで、システムの全体像を把握するのに役立ちます。
オブジェクト指向アプローチでは、UML(Unified Modeling Language)が広く使用されます。UMLは、システムの設計や振る舞いを視覚化し、ドキュメンテーションにも利用されます。
ソフトウェアアーキテクチャのパターンや設計パターンを理解することは、効率的なシステム設計に有用です。これらのパターンは、特定の問題を解決するための既知の最善の方法を提供します。
システムのパフォーマンスを最適化するほか、将来的にシステム拡張に対応できるように設計する能力も重要です。
これらのリテラシーは、システム開発に必要な基本的なスキルです。具体的なプロジェクトやシステムの要件、規模に応じて、他の知識やスキルが求められることもあります。そのため、常に学習を続け、新たなテクノロジーや手法に適応する能力もシステム開発者には求められます。
この記事では、「データベースを視点としたシステム開発アプローチ」をテーマに、システム開発とデータベースの関連性や主な3つのアプローチについて基本的な概要を説明しました。
本文で説明したように、データベースをビジネスで活用するためには、それぞれの用途に応じたシステムと連携することが必要です。そのため、データベースを実用的に活用する前提知識として、今回の記事の内容を理解することが重要なのです。
ただし、当記事では、それぞれのアプローチについて初歩的な説明に留めています。後日、詳細な記事を公開しますので、ご感心のある方は、ぜひ当サイトを訪れてご覧いただけると幸いです。