オブジェクト指向アプローチ(OOA)とは?開発手順と概要を初心者向けに解説

システム開発の手法として広く知られるオブジェクト指向アプローチ

これは、システム内の各要素をオブジェクトとして捉え、それらの相互作用によって全体のシステムをデザインするアプローチで、特に再利用性や可読性の高いコードを書くことが求められる場合に活用されます。

このアプローチの目的と流れはどうなっているのか? そしてどのように進めるべきなのでしょうか?

この記事では、初心者の方でも理解できるようにオブジェクト指向アプローチの概要と開発手順を詳しく解説します。

目次

オブジェクト指向アプローチの概要

この章ではシステム開発アプローチのひとつである「オブジェクト指向アプローチ」について、基本的な概要と大まかな流れを説明します。

オブジェクト指向アプローチ(OOA)とは

オブジェクト指向アプローチ(Object-Oriented Approach)は、システム開発のアプローチの1つで、システム内の各要素をオブジェクトとして扱い、それらの相互作用を通じてシステム全体をデザインします。

このアプローチは、オブジェクト(データとそのデータに対する操作をまとめたもの)を基盤とし、それを中心に機能や振る舞いを組み立てるという考え方です。特に、再利用可能なコードを書く、システムを部品化し易くするといった点で優れています。

このアプローチの対立概念としては、データ中心アプローチ(Data Oriented Approach)やプロセス中心アプローチ(Process Oriented Approach)があります。

それぞれのアプローチはその強みと適用領域があり、どちらが絶対的に優れているわけではありません。システムの目的や要件、開発環境、開発チームのスキルセットなど、さまざまな要素を考慮して最適なアプローチが選択されます。

オブジェクト指向アプローチの流れ

オブジェクト指向アプローチの開発フローは、大まかに下記の4つのステップで構成されます。

  1. 問題領域の特定: ここでシステム化する問題領域を明確にします。全体の要件を理解し、何を解決するためのシステムかを定めます。
  2. オブジェクトとクラスの識別とモデリング: システム化対象の要素をオブジェクトとして識別し、それを基にクラスモデルを作成します。この段階では、オブジェクトの属性や操作、関係性を詳細に把握します。
  3. システム設計とクラス図の作成: クラスモデルを基にシステムの設計を行います。この際、具体的なメソッドや属性の設計も同時に行います。
  4. 実装とテスト: 設計に基づいてシステムを実装し、テストを行いながら最終的なシステムを構築します。

この流れは一例であり、具体的な開発フローはプロジェクトの具体的な要件や状況により異なります。オブジェクト指向アプローチでは基本的にオブジェクトとその関係性から出発し、それを中心にシステム全体を設計・開発します。

オブジェクト指向アプローチにおける開発手順

この章では、オブジェクト指向アプローチにおける開発手順を詳しく説明します。各工程で、具体的にどのような定義、開発を行っているのか例示しますので、理解を進めていきましょう。

1. 問題領域の特定

オブジェクト指向アプローチの開発手順の最初のステップは、システム化する問題領域を明確に特定することです。この段階では、システム化を行う対象の内容と範囲、求められる機能や要件を明確にし、システム開発の対象範囲を定義します。

2. オブジェクトとクラスの識別とモデリング

次に、システム化対象の要素をオブジェクトとして識別し、それを基にクラスモデルを作成します。

ここで、オブジェクトは現実世界のエンティティを模倣し、その属性や操作をカプセル化したものです。クラスはこれらのオブジェクトの設計図となります。

たとえば、ECサイトのシステム化を行う場合、顧客、商品、注文などがオブジェクトとなり、それぞれに名前、価格、数量といった属性や購入する、キャンセルするといった操作が定義されます。

補足

クラスモデルでは、それぞれのクラスとその間の関係性を定義します。この段階では、具体的なシステム設計はまだ行いません。

Class: 顧客, 商品, 注文
Attributes and Operations:
顧客: 名前, 購入する, キャンセルする
商品: 名前, 価格
注文: 数量, 注文を確定する, 注文をキャンセルする

3. システム設計とクラス図の作成

クラスモデルが完成したら、それを基にシステム設計を行い、クラス図を作成します。クラス図は、システムがどのように動作するかを表現するもので、具体的なクラスの構造とその相互関係を定義します。

補足

クラス図では、クラスがどのように関連するか、またはどのように動作するかを定義します。具体的なクラスの構造とその相互関係を定義します。

Class Diagram:
顧客クラス: 名前, 購入するメソッド, キャンセルするメソッド
商品クラス: 名前, 価格
注文クラス: 数量, 注文を確定するメソッド, 注文をキャンセルするメソッド

4. 実装とテスト

最後に、システム設計に基づいて実際のソフトウェアを実装し、テストを行います。これにより、設計したシステムが正しく動作することを確認します。

実装とテストでは、システムが要求仕様を満たしていることを確認します。これにはユニットテスト、統合テスト、システムテストなどが含まれます。


以上がオブジェクト指向アプローチにおける開発手順の概要です。開発プロジェクトの具体的な要件や状況に応じて、これらの手順をカスタマイズすることもあります。また、各ステップごとに適宜レビューと修正を行いながら進めることが大切です。

オブジェクトとクラス

オブジェクトとクラスは、オブジェクト指向プログラミングの基本的な概念です。

オブジェクトは、現実世界のエンティティを模倣したもので、一連の属性(データ)とそれに関連する操作(メソッド)を含みます。一方、クラスはオブジェクトの設計図として、オブジェクトが持つべき属性と操作を定義します。

オブジェクトとクラスの関係とその重要性

オブジェクトは、特定のクラスに基づいてインスタンス化されます。

つまり、クラスは一種の設計図であり、その設計図に従ってオブジェクトが作成されます。たとえば、「自動車」クラスがある場合、そのクラスに基づいて「トヨタのプリウス」、「ホンダのシビック」などの具体的なオブジェクトを作成することができます。

オブジェクトとクラスの関係性はオブジェクト指向プログラミングの基本的なフレームワークを提供します。システム内の異なる種類のデータと機能を組織化し、管理するための基盤を提供します。

オブジェクトとクラスの関係のメリット

オブジェクトとクラスの関係は、オブジェクト指向プログラミングの主要な特性を利用することを可能にします。これらは抽象化、カプセル化、継承、およびポリモーフィズムといった特性を含みます。

1.抽象化

抽象化は、必要な詳細のみを強調し不要な詳細を隠蔽するプロセスです。クラスは、そのインスタンス(オブジェクト)が必要とする属性と操作を定義し、その実装の詳細を隠蔽します。これにより、コードの再利用性と可読性が向上します。

2.カプセル化

カプセル化は、オブジェクトの内部データ(属性)とその操作(メソッド)を一緒に束ねるプロセスです。これにより、外部からの直接的なアクセスを制限し、オブジェクトの状態を不適切な変更から保護します。これは、データの安全性と整合性を保つために重要です。

3.継承

継承は、一つのクラス(スーパークラスまたは親クラス)の属性と操作を別のクラス(サブクラスまたは子クラス)が引き継ぐことです。これにより、既存のクラスのコードを再利用し、新しいクラスを迅速に作成することが可能となります。また、コードの重複を減らし、維持管理を容易にします。

4.ポリモーフィズム

ポリモーフィズムは、「多態性」とも呼ばれ、オブジェクトが同一のインターフェースを共有しながら、それぞれ異なる動作をする能力を意味します。これにより、オブジェクトは同じメッセージに対して異なるレスポンスを提供し、コードの可読性と拡張性を向上させます。


以上のように、オブジェクトとクラスの関係は、オブジェクト指向プログラミングの力強さと柔軟性を実現します。それぞれの特性が適切に利用されると、再利用可能で保守性の高いソフトウェアを効率的に作成することが可能になります。

あとがき

この記事では、「オブジェクト指向アプローチ(OOA)」の基本的な概念、特性、開発手順について詳しく解説しました。オブジェクトとクラスの理解は、現代のソフトウェア開発、特にオブジェクト指向プログラミングを深く理解し、効果的に活用するために不可欠です。

オブジェクト指向アプローチは、ソフトウェアの再利用性、保守性、拡張性を向上させる強力な手法です。特に、システムが大規模で複雑な場合や、新しい機能や変更に対応する柔軟性が必要な場合に、このアプローチの真価が発揮されます。

当サイトでは、今回紹介した「オブジェクト指向アプローチ」以外の手法やデータベースに関する網羅的な情報を引き続き発信していきますので、またご覧頂けると幸いです。

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