社会人が数学を学び直す時、どこから始めるべきか。目的や学習方法

中学・高校の数学を社会人として学び直す。

多くの人がこのニーズを持ちながら、どこから手をつけるべきか、どのような学習方法が最適か、という点で迷っているかもしれません。

インターネットが発達した現代の学習環境では、情報リソースが豊富に存在します。この中で、デジタル辞書や翻訳ツールのような便利なツールも台頭してきており、一部の教科の学習意義が相対的に低下していると感じられることもあるでしょう。

しかし、数学に関しては他の教科とは異なり、テクノロジーで解決できるものではなく、むしろ現代のITやテクノロジーを支える根幹的な分野としての位置づけが強まっています。エンジニアや高度なテクノロジー人材を目指すには、一定レベル以上の数学力が必須となります。

この記事では、社会人として数学を学び直す際の「数学の復習ポイント」や「学習の動機・目的」について詳しく解説します。

目次

数学の学び直しの目的や動機 

学生時代が終わり、それぞれの社会人生活を開始したあと、多くの方は「勉強」から離れ、会社の仕事が生活の中心になるでしょう。 

一方で、学生の時期に勉強した科目の復習に着手する方もいらっしゃいます。この章では、社会人が「数学」を学び直す目的や動機について考えてみます。 

基礎学力の習得 

特に、具体的な目的はなく自身の基礎学力の低下を認識し、「数学」を学び直すケースもあるでしょう。この場合は、たとえば社内の会話や会議などで、自身の基礎学力を認識し、何となく「数学力」の再習得を求めているのかもしれません。 

ビジネス上の要求 

「数学」は、大半の社会人にとって、特に必要なスキルではなくなります。ビジネスにおいては、表計算やデータベースのようなアプリケーションを使う機会が多く、一般的な計算はそれらのツールで対応できてしまうからです。ただし、膨大なデータを対象にした「データ分析」、「データベース構築」、または機械学習や自然言語処理、AIなどの高度なテクノロジー分野においては、適切なモデルを構築するために、一定の数学力が求められます。 

そのため、社内の立場によっては、数学の学び直しが要求されることがあります。 

子どもの教育 

子どもの宿題や、学習のヘルプを行うために、「数学」を学び直す方もいらっしゃるでしょう。 

日常生活で「数学」から離れていると、基本的な単元でも忘れてしまうことがあります。たとえば、「台形の面積の求め方」「小数点の乗法・除法」。 

このような小学校レベルの数学でも、簡単に子どもに教えることができなくなってしまう方は、意外に多いのかもしれません。小学校でも高学年以上であれば、一般常識や感覚で答えることが難しいレベルの数学を学んでいるのです。 

子どもの宿題や学習のヘルプのために、数学を学び直す方も一定数いらっしゃるでしょう。 

エンジニア思考 

多くの社会人は、現状よりも高い充実感を求めます。「今よりも能力をフルに使う仕事がしたい」「より給料が高い職種に就きたい」。このような考えから、一般的に難易度や給料が高い「高度なエンジニア」を目標にする方もいらっしゃるでしょう。そして、実用的なスキルを身につけるためには、まずは知識レベルの拡充が必要になります。 

高度なエンジニアを目指すためには、根幹的な学問である「数学」の習得が必須なのです。 

社会人にとっての数学 

社会人にとって、「数学」の学び直しは気軽に始めるものではないでしょう。プライベートの多くの時間を取られてしまうばかりか、学習期間の計画も立てづらいためです。特に、仕事や給料に直結しない場合、明確なモチベーションがなければ、実際の行動に移せないままになってしまうかもしれません。毎日、なにかを継続することは簡単ではないのです。 

この章では、社会人にとっての「数学」について考えてみます。 

一般的な業務では不要 

現代の仕事環境では、特に専門知識は不要でも表計算を行える「エクセル」や、優れたUIを備えた「データベース・分析ツール」などは、数えきれないほど存在します。 

列の集計や平均値、特定の条件下における集計、グラフの作成など、ツールが備える機能や関数を使えば、自ら計算する必要がないケースがほとんどです。 

そのため、特に「数学力」の低さを自覚する機会も少なく、弊害を感じることもほぼないでしょう。 

一般的な業務であれば、特に「数学力」が求められる(評価される)ことはなく、文章力やプレゼン力、営業力、コミュニケーション力などが重要視されることが多いのです。 

分析に有利 

インターネットの進歩や通信速度の高速化によって、現代は多くのデータが蓄積される時代です。そして、「データの分析・活用」がビジネスを飛躍的に成長する事例は多く存在します。 

海外のテック企業GAFAなどはその典型であり、データを分析することによって、顧客動向やニーズを的確に掴み、超合理的なビジネスを展開しています。その他、NetFlixやSpotifyなどのデジタルストリーミングサービスにおいても、データ分析から高度なレコメンドサービスを実現し、サービスの維持と成長に繋げています。 

データ分析の分野は、今後、最も発展を遂げる分野のひとつであり、機械学習や自然言語処理、AIの根幹になる分野でもあります。 

データ分析では、確率統計や微積分、線形代数などの数学が必須です。外部委託やツールに依存するのではなく、自社で最も適切な分析モデルを構築し、継続的に運用するために、「数学力」は大きな武器になるのです。 

そのような業種・立場の社会人であれば、「数学」の学び直しは、大きな価値を生み出す可能性があります。 

高度テクノロジーの活用 

前節で説明した通り、テクノロジーが高度化するほど、そして完成されたモデルを使わずに、自社に最適化されたモデルを求めるほど、エンジニア力が必要になります。 

たとえば、データ分析は手順化、定型化されたものと考えている方もいますが、実際は人智によって構築されるのです。自然言語処理の分野で使われる「言語モデル」、機械学習によって構築される「分析モデル」。 

これらは、どのような特徴量(要素)を使うか、どの程度のテストデータが適正か、そしてどのような分析手法を使うか、によってモデルの精度は大きく変わります。 

ITが発達した現代においても、モデルやツールは「人」によって開発されており、エンジニアの力量が大きく反映するのです。 

つまり、テクノロジーを活用して自社に最適な開発、運営を自社で完結するためには、「数学力」は避けては通れません。 

このケースでは、「数学」がビジネスにおいて、大きな価値を生み出す可能性を秘めています。 

数学の復習のポイント 

社会人が数学を復習する場合、多くの時間を費やすことが容易に想像できます。時間が限られた中で、または目標を早く実現するために、どのような点を重視して学び直せばよいのでしょう。この章では、数学の復習のポイントについて説明します。 

基礎的な数学力の習得 

通常、社会人が数学を学び直すとき、小学校〜高校のレベルが復習の対象になります。普段から数学の知識を使っていないのであれば、高校レベルの数学(数Ⅰ〜Ⅲ、数A〜C)にチャレンジすると、あまりの難しさにやる気を削がれるかもしれません。 

これには個人差がありますが、スラスラと解答ができないレベルにまで遡って復習を進めたほうがよいでしょう。たとえば、1次方程式を理解していなければ、2次方程式は解けません。 

そもそも、「文字式」を理解していなければ、中学レベルの数学全般、解くことは難しいでしょう。まずは、自身の数学力を自覚して、基礎的な数学力を習得しましょう、 

単元の整理 

数学には多くの単元が存在します。四則演算、図形、データの整理、統計と確率、微積分。 

前節で、基礎的な数学力の重要性について説明しましたが、数学の学び直しの動機が明確であれば、関連が強い単元を集中的に学習してもよいでしょう。 

基礎力があるのは理想ですが、学習に割ける時間が限られている以上、単元を整理して効率的に学習することも大切です。 

自身の学び直しの目的と動機から、数学のどの単元が求められているのか、またその単元を理解するための基礎単元はどれなのか。 

それらを整理して、効率的な学習計画を立てるのもよい戦略です。 

社会人が数学を学び直す学習範囲 

では、社会人になってから数学を学び直す際には、どこまで遡って学習範囲を定めればよいのか。ここは、数学を学び直す目的を成就するための最重要ポイントでもあります。

もちろん、個々の現段階の数学力から判断すべきであり、個人差が大きい要素のため、一概に決めることはできませんが、ガイドラインとしてこの章で考えてみます。

小学校レベルの数学 

個人的には、小学校高学年レベルの数学(算数)から学び直すことがベストと考えています。

理由として、数学は「基礎から応用」の特徴が強い学問のため、基礎力が安定しているほど、後の学習が理解しやすくなるためです。中には「小学校レベルの数学」は不要に感じる方もいらっしゃるでしょう。

小学校でも高学年になれば、大人でも簡単に解けないレベルの数学を学んでいます。たとえば、下記の星の図をご覧ください。赤枠の「角度」について、解答を導き出せますか?

実は、この図形問題も小学校高学年レベルの算数です。

赤枠の角度は?

ただし小学校レベルの数学は、しっかりと学習すれば解けない問題ではありませんので、数時間で復習を終えることができるでしょう。

中学校レベルの数学 

中学校になると授業で習う数学の難易度が高くなってきます。数学の代表的な単元である2次方程式や1次関数、因数分解、三平方の定理など、高校レベルの本格的な数学に向けた大事な基礎固めです。

また、当サイトの全体的なテーマでもある「データ分析・機械学習」においても、中学レベルの数学力は必須となります。そのため、社会人として数学を学び直すのであれば、少なくとも中学レベルから復習することが求められるでしょう。

自身の数学力に合わせて、深入りしすぎないように中学全般の数学力は習得しておきましょう。市販のドリル・問題集を使って自身の理解力をテストしてみるのもよいでしょう。

高校レベルの数学 

一般に、高校になると「文系」「理系」のように学科ごとの選択が始まり、数学もその影響を受けるようになります。特に、文系と理系で学習する数学の内容が大きく異なり、理系数学は更に深く、広範囲に及ぶ単元を網羅します。

文系の数学は基本的な数学の理解を深めることを目的とし、統計学や確率、また実社会の問題解決のための数学的手法を学びます。一方、理系の数学は微分積分学、線形代数、ベクトル解析など、より高度な数学的技術と概念を習得します。

ここは当記事の「数学の学び直しの目的や動機 」の章で説明した目的や動機によって、学習する必要性は分かれるでしょう。『ビジネス上の要求』や『エンジニア思考』であれば、高校レベルの数学は避けては通れません。

一方、しっかりと学習することで、データ分析や機械学習の基礎的な概要は、見違えるほど理解がしやすくなります。ただし、自身のゴール目標が高いほど、より高い数学力も必要になってきます。

数学を学び直す学習方法

社会人が数学を学び直す際の学習方法にはさまざまな選択肢があります。書籍やオンライン、地域によっては特定の科目に限定した「生涯学習形式」のスクールもあるかもしれません。

もちろん、どのような学習方法が向いているのかはご自身で自由に選択すればよいのですが、個人的には一般的な「書籍」を使っての学習で十分かつ最も合理的と思います。

数学は、適切な学習範囲を設定することで、基礎から応用まで段階的に理解ができる学問です。

Amazonでも数学関連の参考書・ドリルは簡単に購入することができます。

つまり、行動力さえあれば、いつでも数学の学習を開始することができるのです。

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この記事を書いた人

データ分析・機械学習・ディープラーニングを本格的に研究するフリーランスエンジニア。
著者は実際に中学校数学〜高校数学のすべての単元を社会人になって学習し直した経験を持つ。現代テクノロジーの根幹である数学を学び直す社会人のために、当サイトを運営している。

親サイト:analytics-okinawa.jp

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